読書レビュー:JKローリングのハードボイルド推理小説第二弾「Silkworm」(追記)
- 2014.07.30 Wednesday
- 18:09
評価:
Robert Galbraith Sphere ¥ 2,031 (2014-06-19) |
JUGEMテーマ:読書
ハリポタの作者、J.K.ローリングがRobert Galbraithという変名で書いているCormoran Strikeシリーズの第二弾。
ハードボイルドな推理小説だ。一作目のCuckoo's Callingを発表して間もなく、彼女の弁護士の妻の友人(ややこしいなあ…笑)が、このRobert Galbraithの正体はJ.K.ローリングだということをマスコミにバラしてしまった。本人は自分の名声なしでこの作品を世に出したかったようなので気の毒なことである。一作目もなかなかいい出来だったので、二作目もさっそく読んでみた。
主人公のコルモラン・ストライクは30代の男性だ。父親は有名なロックシンガーのジョニー・ロークビーだが、私生児なので父親との縁は薄い。彼自身は軍隊に入り、MP(軍警察)の捜査官だったが、アフガニスタンで片足の膝から下を失い、除隊後は私立探偵となる。
一作目では自殺として片付けられていた人気モデルの死亡事件が殺人事件であることを暴いたコルモランは、ロークビーの息子であるということもあいまって、一躍マスコミの寵児となる。そのおかげで探偵仕事の依頼も増えたが、ほとんどは離婚でもめている金持ちの妻による夫の浮気調査や裕福なビジネスマンによる愛人秘書の浮気調査などだった。ある日、あまり有名ではない作家オーウェン・クインの妻レオノーラが、行方不明になった夫を探して欲しい、と依頼にやってくる。行方を知っていそうなエージェントのエリザベスや出版社に聞き込みを始めたコルモランは、オーウェンがエリザベスや彼を長年担当した編集者のジェリー・ウォルドグレイブ、出版社の社長ダニエル・チャード、昔はオーウェンの友人だった人気作家のマイケル・ファンコート、また彼の愛人や妻など、すべての人を題材にした小説「Bombyx mori」(カイコの意味。本のタイトル、Silkwormも同じ意味)を書き上げたばかりだということを知る。しかし、その小説はどうやらオーウェン自身が主人公になっており、寓話の形をとってはいるものの、周囲の人々を徹底的に侮辱するものだったらしい。やがてコルモランはオーウェンの死体を発見するが、その死体は小説の中で描かれているとおりの凄惨な状態だった。この小説に登場する人物の誰かがオーウェンを殺したのは間違いない、と睨んだコルモランは秘書兼アシスタントのロビンと一緒に捜査を続ける…。
というのが設定。また、前作でコルモランの婚約者だったが喧嘩別れしたシャーロットの名前も頻繁に出てくる。コルモランはシャーロットへの思いを断ち切れず苦しんでおり、彼女が元彼とヨリを戻して結婚することを人づてに知るのである。
推理小説としては今作の方が一作目より完成度が高いような気がした。婚約者がいるロビンとコルモランの関係も微妙なところで漂っていてその人間ドラマも面白いし、今回登場する多くの人々は、ローリング女史のよく知る文壇の世界を舞台にしているせいか、より立体感があって、リアリズムも強く出ていると思う。
作家同士のプライドやエゴもこの中では生々しく描かれている。読み応えがあり、後半は一気に読ませる力があった。犯人が明かされる最後も、なかなか鮮やかなどんでん返し(勘のいい読者は気づくかもしれないが、私は綺麗に騙された)だし、最後のサスペンス溢れる追跡劇も良かった。そして読後感は一作目より爽やかになるようなエンディングだったのもいい。
ここからはネタバレになりますので未読の方はご注意ください。
ハリポタの作者、J.K.ローリングがRobert Galbraithという変名で書いているCormoran Strikeシリーズの第二弾。
ハードボイルドな推理小説だ。一作目のCuckoo's Callingを発表して間もなく、彼女の弁護士の妻の友人(ややこしいなあ…笑)が、このRobert Galbraithの正体はJ.K.ローリングだということをマスコミにバラしてしまった。本人は自分の名声なしでこの作品を世に出したかったようなので気の毒なことである。一作目もなかなかいい出来だったので、二作目もさっそく読んでみた。
主人公のコルモラン・ストライクは30代の男性だ。父親は有名なロックシンガーのジョニー・ロークビーだが、私生児なので父親との縁は薄い。彼自身は軍隊に入り、MP(軍警察)の捜査官だったが、アフガニスタンで片足の膝から下を失い、除隊後は私立探偵となる。
一作目では自殺として片付けられていた人気モデルの死亡事件が殺人事件であることを暴いたコルモランは、ロークビーの息子であるということもあいまって、一躍マスコミの寵児となる。そのおかげで探偵仕事の依頼も増えたが、ほとんどは離婚でもめている金持ちの妻による夫の浮気調査や裕福なビジネスマンによる愛人秘書の浮気調査などだった。ある日、あまり有名ではない作家オーウェン・クインの妻レオノーラが、行方不明になった夫を探して欲しい、と依頼にやってくる。行方を知っていそうなエージェントのエリザベスや出版社に聞き込みを始めたコルモランは、オーウェンがエリザベスや彼を長年担当した編集者のジェリー・ウォルドグレイブ、出版社の社長ダニエル・チャード、昔はオーウェンの友人だった人気作家のマイケル・ファンコート、また彼の愛人や妻など、すべての人を題材にした小説「Bombyx mori」(カイコの意味。本のタイトル、Silkwormも同じ意味)を書き上げたばかりだということを知る。しかし、その小説はどうやらオーウェン自身が主人公になっており、寓話の形をとってはいるものの、周囲の人々を徹底的に侮辱するものだったらしい。やがてコルモランはオーウェンの死体を発見するが、その死体は小説の中で描かれているとおりの凄惨な状態だった。この小説に登場する人物の誰かがオーウェンを殺したのは間違いない、と睨んだコルモランは秘書兼アシスタントのロビンと一緒に捜査を続ける…。
というのが設定。また、前作でコルモランの婚約者だったが喧嘩別れしたシャーロットの名前も頻繁に出てくる。コルモランはシャーロットへの思いを断ち切れず苦しんでおり、彼女が元彼とヨリを戻して結婚することを人づてに知るのである。
推理小説としては今作の方が一作目より完成度が高いような気がした。婚約者がいるロビンとコルモランの関係も微妙なところで漂っていてその人間ドラマも面白いし、今回登場する多くの人々は、ローリング女史のよく知る文壇の世界を舞台にしているせいか、より立体感があって、リアリズムも強く出ていると思う。
作家同士のプライドやエゴもこの中では生々しく描かれている。読み応えがあり、後半は一気に読ませる力があった。犯人が明かされる最後も、なかなか鮮やかなどんでん返し(勘のいい読者は気づくかもしれないが、私は綺麗に騙された)だし、最後のサスペンス溢れる追跡劇も良かった。そして読後感は一作目より爽やかになるようなエンディングだったのもいい。
ここからはネタバレになりますので未読の方はご注意ください。