映画レビュー:Big Night(邦題:リストランテの夜)〜 アメリカで奮闘するイタリア人兄弟の悲喜こもごも

  • 2013.12.07 Saturday
  • 20:40
評価:
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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
¥ 1,000
(2008-06-20)

JUGEMテーマ:映画

以前からずっと気になっていたこの映画をやっと観ることができた。データなどはこちら。

あらすじ
1950年代のニュージャージー州で(マンハッタンからハドソン河を南に渡るとすぐニュージャージー州である)小さなイタリア料理店「パラダイス」を営む兄弟のお話。兄のプリモ(プリモは一番、という意味なので、一郎という感じ)はシェフ、弟のセコンド(二郎という感じの名前)はマネージャーだが、料理の下準備は2人でやっている。プリモは職人気質で、本格イタリア料理にこだわっているので、アメリカ人の客の舌には合わないのか、商売はあまり流行らない。いっぽう、通りの向かいにあるイタリア料理店(オーナーの名前をとって、「パスカルの店」)は味こそ二流だが、アメリカ人向けの商売のやり方で大繁盛している。

セコンドにはフィリスというガールフレンドがいるが、商売がうまくいっていないこともあり、彼はフィリスとの関係に今ひとつ責任を持つ気になれず、パスカルの妻のガブリエラとも浮気をしている。資金繰りに苦労するセコンドに、パスカルは店を閉めて、兄と共に自分の店で働かないかと誘う。それを断るセコンドに、パスカルは、ならば人気歌手のルイ・プリマを兄弟の店につれてきてやる、と言う。それが客寄せになる、と信じたセコンドはプリモを説得し、二人は残った資金のすべてをその特別ディナーの準備につぎ込む。

そして当日、フィリスも準備を手伝い、パラダイスには地元の新聞記者をはじめ、近所の人々やパスカルとガブリエラなど、ルイ・プリマを目当てに多くの人が集まる。惜しみなく費用を使い、プリモがそのシェフとしてのプライドをすべて賭けて作った素晴らしいイタリア料理のコースに舌鼓を打つ人々。しかしルイ・プリマは現れないまま夜が更けていく…。
感想
プリモを演じるトニー・シャルーブは、1990年代に人気を誇ったテレビコメディ、Wingsのアントニオ・スカルパッチ役以来、大好きな役者である。その後、Monkという探偵ドラマで長年主役をつとめ、一躍スターになった人だ。とにかく芸の幅が広く、シリアスも悪役もコメディも気の毒な男も、変な外国人役も、なんでもこなしてしまう人だ。ご本人はれっきとしたアメリカ生まれのレバノン系アメリカ人だが、イタリア系、アラブ系などの外国人を演じることが多かったので、Monkで普通に英語をしゃべっているのを聞くと違和感を感じたりしたものだ(笑)。

弟のセコンドを演じ、脚本(ジョセフ・トロピアーノと共同執筆)と監督(キャンベル・スコットと共同監督)もつとめたスタンリー・トゥッチもこれまた才能豊かな人で、「Shall We Dance?」の米国版では、オリジナルの日本版で竹中直人が怪演した(笑)あの役を、もうちょっと若くてナイーブな感じで、でもやっぱりどこかキモイ雰囲気で(笑)、見事に演じた。料理研究家、ジュリア・チャイルドの生涯を描いた「Julie & Julia」(ジュリー&ジュリア)では、ジュリアの夫で外交官だったポール・チャイルドを、静かな押さえた演技で演じた。

この2人が17年前にがっぷり四つに組んで熱演した映画である。まず、実感したのは2人とも若かったなあ、ということである(笑)。とくにトゥッチのハンサムっぷりと言ったら。50年代のファッションや髪型がよく似合っていて本当に、ニュージャージーやニューヨークエリアのイタリア移民の若者らしさが溢れていた。アメリカで生まれたイタリア系ではなく、夢を抱いてイタリアからやってきた兄弟の悲喜こもごもを、この2人は本当によく表現していた。

ストーリーは淡々としているのだが、最後の方で兄弟がお互いの感情をぶつけ合うシーンに向かう感情の盛り上がりが実に見事だ。2人が取っ組み合いの喧嘩をした後の、早朝のレストランのキッチンでのエンディングは秀逸の一言。この後2人がどんな決断をするのか、観客にはわからず、ただ想像するしかないのだが、兄弟の絆だけは信じることが出来る。

そして、全編を通じて画面に登場する、それはそれは美味しそうなイタリア料理。画面から香りがただよってくるようだ。派手な映画ではないが、大人向けのコメディ、それも大声を出して笑うのではなく、しみじみと、時々クツクツと笑いがこぼれるような、でもホロリとする、まさにペーソスあふれる人間ドラマである。美味しいものが出てくる映画が好きな方には特にお勧め。

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