四年に一度の大統領選挙が終わった。
今年はかつてない激しい戦いが繰り広げられ、政治に興味のある国民は感情的にも支持する候補への思い入れが強く、政治に関心がない人はさぞかしうんざりしたことだろう。
結果として民主党の現職、オバマ大統領が再選を果たし、共和党候補で元マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー候補は敗れた。
多くの国民が持つ停滞する経済へのいらだちは、ビジネスマンとして成功をおさめたミット・ロムニー氏への支持となって表れたが、彼は最初からいわゆる「好感度」が非常に低かった。
州知事時代と現在かかげるプラットフォーム、予備選挙中とその後の発言内容が両極端に違うため、「選挙で勝つためなら、自分の信念とは関係なく、その場その場で投票者に合わせた適当なことを言う」という評判が最後までつきまとった。また、堅苦しく温かみのない印象が、カリスマ性のあるオバマ大統領にくらべて不利となったのも事実だ。
共和党の近年の極端に保守的なプラットフォーム(女性問題や人種問題、移民問題など)がいわゆる無所属の投票者たちから敬遠されたのも敗北の一因だろう。たとえば女性問題では、避妊を保険でカバーすることに反対するだけでなく、レイプや性的虐待による妊娠でも中絶をも非合法化すべき、と言う共和党の政治家が増えた。彼らの非科学的かつ、女性差別的な発言が、たくさんの女性投票者の怒りをかったのも、共和党全体に対する反感、ひいてはロムニー候補に対する反感につながった。
「本物のレイプをされたとき、女性の身体は自動的に妊娠機能をシャットダウンする、と知り合いの医者が教えてくれた。だから中絶を許してはならない」とテレビで発言したミズーリ州のエイキン候補。(昨夜敗れた)
「レイプや性虐待によって妊娠したとしても、それは神からの贈り物。前向きに考えて受け止めるべきだ(つまりそういうケースでも中絶を許すべきでない)」と討論会で発言したインディアナ州のリチャード・マードック候補(同じく昨夜敗れた)。
このように、常識では考えられない発言をする人々が共和党の中心をにないつつあるのが現在の傾向である。
ロムニー候補は、予備選期間中、徹底的にこういう支持層の人気を得るべく、厳しい保守的プラットフォームを掲げた。しかし予備選が終わると態度を変え、今度はまだ態度をはっきり決めていない無所属層にアピールするため、もっと中庸な姿勢を打ち出したのである。ここまで態度をコロッと変える候補者は珍しい。ずっと彼を見てきたマサチューセッツ州の私たちにとっては予測できたことではあったけれど。
今はインターネットもあり、過去の発言を隠すのは容易なことではない。彼が立場を変えるたびに、過去の発言が持ち出され、彼の「信用度」が下がっていったのは事実だろう。そして、秘密裏に録画され、メディアに流された、密室での富豪を相手にした資金集めのディナーパーティでの彼の発言「アメリカ人の47パーセントは政府に依存するだけで税金を払わない。大統領になったら、そんな連中を助けるつもりはない」が大きく取り上げられた。これも大きなダメージとなった。