読書レビュー:宮部みゆき「おまえさん」下巻
- 2012.05.29 Tuesday
- 11:57
上巻のレビューから続く。
さて、下巻でさらに登場する面白い新キャラクターは弓之助の兄、淳三郎である。これがまたいい人物である。商家の三男坊だが商いには興味がない。御家人株でも買ってもらおうか、と刀を習ってはみたものの、今時の武士は学問の方が大事と知り、諦める。今はのんびりとした遊び人なのである。
弓之助にとっては困った兄のようだが、人に好かれ、女にもてる。単なるプレイボーイというわけでもなく、いい意味での「人たらし」な奴なのだ(笑)。この本ではまだ本当にやりたいことは見つけていないが、このシリーズがもしまだ続くなら、その中で淳三郎の道も定まっていくのかもしれない、とまた先が楽しみになる(笑)。これまた新登場の丸助というお爺さんもいい。この人などもドラマ化したらどの役者さんがいいかなあ、と色々想像力をかきたてるいいキャラである。
今回サブプロットの一つにおでこの三太郎の母の話があった。政五郎とお紺の必死の気遣いで、おでこは何も知らないままに終わるのだが、なぜおでこの母、おきえがおでこを捨てたのか、そしてそ後彼女がどうなったかがこの作品の中で語られる。
政五郎もお紺も、おきえのことはずっと自分勝手な女だ思ってきた。そして再会してからもしばらくその思いは変わらない。政五郎はおきえに会う度に嫌なものを見たような気持ちになる。
しかしこの下巻で、政五郎はおきえの思いを知る。そしておきえはおきえなりに必死に、自分なりのやり方ですじを通して、そして覚悟を決めて生きていることを悟る。それを知った政五郎がおきえを見る目はそれまでとはまったく違ったものとなったのである。
きえの話は特に、私に大切なことを教えてくれる。人のことは本当に、本当にはたから見ているだけではわからない。勝手に決め付けてはいけないのだ、とあらためて思うのである。現実にも似たようなことはたくさん、たくさん、ある。新聞や雑誌に書かれていることでさえ。
親しい人が誤解されて長いこと辛い思いをするのも見た。自分自身も勝手に誰かに決め付けられて辛い思いをした。自分もどこかで同じことをしていないか、とこの本を読んで思ったのだった。
メインの事件もまた悲しい終わりとなる。しかし悲しいことばかりでは、もちろん、ない。行き場がなかった本宮源右衛門は、自らを犠牲にして信之輔の窮地を救うことでかえって自由になり、お徳のおかげで「新しい」余生に嬉々として踏み出す。
お徳を助けてくれていた板前の彦一と、前作に登場したお六が幸せになれそうなのも嬉しい。そして二枚目の町医者、村田玄徳もこれから登場することはあるのだろうか。というかシリーズ自体、また続くのだろうか(続いて欲しい)。
このシリーズと高田郁の「澪つくし」シリーズは、私にとっては自分の空想の中では、ドラマ化して欲しい小説ナンバーワン(どちらも同列一位)である。NHKあたりで丁寧に作ってくれないかなあ。
さて、下巻でさらに登場する面白い新キャラクターは弓之助の兄、淳三郎である。これがまたいい人物である。商家の三男坊だが商いには興味がない。御家人株でも買ってもらおうか、と刀を習ってはみたものの、今時の武士は学問の方が大事と知り、諦める。今はのんびりとした遊び人なのである。
弓之助にとっては困った兄のようだが、人に好かれ、女にもてる。単なるプレイボーイというわけでもなく、いい意味での「人たらし」な奴なのだ(笑)。この本ではまだ本当にやりたいことは見つけていないが、このシリーズがもしまだ続くなら、その中で淳三郎の道も定まっていくのかもしれない、とまた先が楽しみになる(笑)。これまた新登場の丸助というお爺さんもいい。この人などもドラマ化したらどの役者さんがいいかなあ、と色々想像力をかきたてるいいキャラである。
今回サブプロットの一つにおでこの三太郎の母の話があった。政五郎とお紺の必死の気遣いで、おでこは何も知らないままに終わるのだが、なぜおでこの母、おきえがおでこを捨てたのか、そしてそ後彼女がどうなったかがこの作品の中で語られる。
政五郎もお紺も、おきえのことはずっと自分勝手な女だ思ってきた。そして再会してからもしばらくその思いは変わらない。政五郎はおきえに会う度に嫌なものを見たような気持ちになる。
しかしこの下巻で、政五郎はおきえの思いを知る。そしておきえはおきえなりに必死に、自分なりのやり方ですじを通して、そして覚悟を決めて生きていることを悟る。それを知った政五郎がおきえを見る目はそれまでとはまったく違ったものとなったのである。
きえの話は特に、私に大切なことを教えてくれる。人のことは本当に、本当にはたから見ているだけではわからない。勝手に決め付けてはいけないのだ、とあらためて思うのである。現実にも似たようなことはたくさん、たくさん、ある。新聞や雑誌に書かれていることでさえ。
親しい人が誤解されて長いこと辛い思いをするのも見た。自分自身も勝手に誰かに決め付けられて辛い思いをした。自分もどこかで同じことをしていないか、とこの本を読んで思ったのだった。
メインの事件もまた悲しい終わりとなる。しかし悲しいことばかりでは、もちろん、ない。行き場がなかった本宮源右衛門は、自らを犠牲にして信之輔の窮地を救うことでかえって自由になり、お徳のおかげで「新しい」余生に嬉々として踏み出す。
お徳を助けてくれていた板前の彦一と、前作に登場したお六が幸せになれそうなのも嬉しい。そして二枚目の町医者、村田玄徳もこれから登場することはあるのだろうか。というかシリーズ自体、また続くのだろうか(続いて欲しい)。
このシリーズと高田郁の「澪つくし」シリーズは、私にとっては自分の空想の中では、ドラマ化して欲しい小説ナンバーワン(どちらも同列一位)である。NHKあたりで丁寧に作ってくれないかなあ。
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