読書レビュー:スペンサーシリーズ第6巻 Looking For Rachel Wallace
- 2010.04.26 Monday
- 22:34
JUGEMテーマ:読書
あらすじ:
レイチェル・ウォレスは同性愛者であることを堂々と公表し、女性の社会地位向上のために活動している女性思想家である。彼女が近々出版する本では、ボストンに焦点を絞り、そこで女性が職場などで受けている差別やハラスメントを赤裸々に描いている。それらの差別は他の腐敗とも結びついており、彼女は取材で得た情報でそういった腐敗に関連している人々を公表している。そのためか、脅迫状が届くようになり、出版社によってスペンサーがボディガードとして雇われた。本の宣伝のために、ウォレスは図書館で講義をしたり、本屋でサイン会を行うため、ボストンに滞在していたのだ。しかしフェミニストであるウォレスはスペンサーを敵視する。自分の役目をこなそうとするスペンサーだが、彼女に危害を加えようとする人々を力で抑えることが何度か続き、非暴力主義のウォレスはスペンサーをクビにした。その直後、彼女は誘拐され、責任を感じたスペンサーは彼女を探し始める。
感想:
同性愛者に対するアメリカ社会の目は少しずつ変わってきている。30年前の1980年に比べると、私が今住んでいるボストンエリアは大分差別が少なくなったと言えるだろう。しかし、今でも差別は強く残っている。大学の教え子で同性愛であることを打ち明けたら実家から縁を切られた子もいるし、同性愛は病気なんだから医者に通って治療を受けろ、と親に言われた子もいるほどだ。
もっと保守的な地域では彼らはもっともっと辛い思いをしていることだろう。同性愛者であることを公表することを、coming out of closetと言うが、出るに出られず、クローゼットの中に閉じこもっている人は今でも多数いる。
この本を読んでいると、女性の同性愛者は男性よりもっと差別がきつかったようだ。女性差別に加えて同性愛差別が加わる、ということらしい。マサチューセッツは現在、同性婚が認められている数少ない州であり、人々がカミングアウトしやすい環境となっているが、当時はそんなことはとても考えられなかった。
比較的リベラルな州ではあるが、やはり保守的な人たちはいるわけで、この本にも、ウォレスを攻撃し、あまつさえ暴力に及ぶ人たちも登場する。差別はどこの国にもあるが、アメリカではまだオープンに語られるだけましなのかもしれないなあ、とこの本を読みながらふと思った。オープンに語られるならば、まだ戦っていくことも可能だからである。
現在オバマ大統領が保守派から尋常ではない攻撃を受けているのも、彼がリベラルだからではない。彼はクリントンに比べるとよほど中庸路線である。あきらかに黒人大統領ということに拒否反応、嫌悪感を示しているわけで、彼の政策など二の次だ、というのが彼らのなりふり構わぬ攻撃ぶりを見ているとよくわかる。
人々の意識は少しずつ変化していくわけで、1980年代に黒人の大統領が登場するなどとても考えられないことだったから、進歩は確実にしているのだが、まだまだ先は遠い、と思わざるを得ない。
この本は本当に色々と考えさせられた。言論の自由は、他を攻撃する自由でもある。アメリカではそれが両刃の剣となっており、どこで線を引くべきなのか、難しい問題だ。ウォレスの時代から、まだ差別に対する戦いはいろんなところで続いているのである。
ちなみに今回登場したBelmontの町。私が住んでいる町の隣で、比較的お上品なお金持ちが多い町である。マッケイン上院議員と大統領候補を争った元州知事、ミット・ロムニーが住んでいた町でもある。ボストンは、お金持ちの町ほど保守傾向が強いので(笑)、この本の中で、ベルモントを選んだパーカーのセンスはなるほど、という感じである・・・。
次は8巻のA Savage Place。7巻のEarly Autumnは何度も読んでいる愛読書なので今回は飛ばして次に行く。
あらすじ:
レイチェル・ウォレスは同性愛者であることを堂々と公表し、女性の社会地位向上のために活動している女性思想家である。彼女が近々出版する本では、ボストンに焦点を絞り、そこで女性が職場などで受けている差別やハラスメントを赤裸々に描いている。それらの差別は他の腐敗とも結びついており、彼女は取材で得た情報でそういった腐敗に関連している人々を公表している。そのためか、脅迫状が届くようになり、出版社によってスペンサーがボディガードとして雇われた。本の宣伝のために、ウォレスは図書館で講義をしたり、本屋でサイン会を行うため、ボストンに滞在していたのだ。しかしフェミニストであるウォレスはスペンサーを敵視する。自分の役目をこなそうとするスペンサーだが、彼女に危害を加えようとする人々を力で抑えることが何度か続き、非暴力主義のウォレスはスペンサーをクビにした。その直後、彼女は誘拐され、責任を感じたスペンサーは彼女を探し始める。
感想:
同性愛者に対するアメリカ社会の目は少しずつ変わってきている。30年前の1980年に比べると、私が今住んでいるボストンエリアは大分差別が少なくなったと言えるだろう。しかし、今でも差別は強く残っている。大学の教え子で同性愛であることを打ち明けたら実家から縁を切られた子もいるし、同性愛は病気なんだから医者に通って治療を受けろ、と親に言われた子もいるほどだ。
もっと保守的な地域では彼らはもっともっと辛い思いをしていることだろう。同性愛者であることを公表することを、coming out of closetと言うが、出るに出られず、クローゼットの中に閉じこもっている人は今でも多数いる。
この本を読んでいると、女性の同性愛者は男性よりもっと差別がきつかったようだ。女性差別に加えて同性愛差別が加わる、ということらしい。マサチューセッツは現在、同性婚が認められている数少ない州であり、人々がカミングアウトしやすい環境となっているが、当時はそんなことはとても考えられなかった。
比較的リベラルな州ではあるが、やはり保守的な人たちはいるわけで、この本にも、ウォレスを攻撃し、あまつさえ暴力に及ぶ人たちも登場する。差別はどこの国にもあるが、アメリカではまだオープンに語られるだけましなのかもしれないなあ、とこの本を読みながらふと思った。オープンに語られるならば、まだ戦っていくことも可能だからである。
現在オバマ大統領が保守派から尋常ではない攻撃を受けているのも、彼がリベラルだからではない。彼はクリントンに比べるとよほど中庸路線である。あきらかに黒人大統領ということに拒否反応、嫌悪感を示しているわけで、彼の政策など二の次だ、というのが彼らのなりふり構わぬ攻撃ぶりを見ているとよくわかる。
人々の意識は少しずつ変化していくわけで、1980年代に黒人の大統領が登場するなどとても考えられないことだったから、進歩は確実にしているのだが、まだまだ先は遠い、と思わざるを得ない。
この本は本当に色々と考えさせられた。言論の自由は、他を攻撃する自由でもある。アメリカではそれが両刃の剣となっており、どこで線を引くべきなのか、難しい問題だ。ウォレスの時代から、まだ差別に対する戦いはいろんなところで続いているのである。
ちなみに今回登場したBelmontの町。私が住んでいる町の隣で、比較的お上品なお金持ちが多い町である。マッケイン上院議員と大統領候補を争った元州知事、ミット・ロムニーが住んでいた町でもある。ボストンは、お金持ちの町ほど保守傾向が強いので(笑)、この本の中で、ベルモントを選んだパーカーのセンスはなるほど、という感じである・・・。
次は8巻のA Savage Place。7巻のEarly Autumnは何度も読んでいる愛読書なので今回は飛ばして次に行く。