読書レビュー:しゃばけシリーズ(しゃばけ・ぬしさまへ・ねこのばば・おまけのこ・うそうそ)

  • 2009.09.28 Monday
  • 22:19
JUGEMテーマ:読書

出入りの読書掲示板で勧められて購入した本。文庫版で今のところ5冊出ているので、この3冊に加えて「おまけのこ」と「うそうそ」も読んだ。このブログ、残念ながら一度に載せられるレビュー情報が3点までなのだそうで、だから「おまけのこ」と「うそうそ」の画像と情報は無し。

この本では、妖怪のことを「妖(あやかし)」と呼び、大物のになると「大妖」と呼ぶらしい。大店「長崎屋」の病弱な跡取り、17歳の若だんな(一太郎)が主人公である。祖母(大妖皮衣、長崎屋初代おかみとしての名はおぎん)が実は齢三千年の大妖で、人間の男と二千年越しの恋をし、若だんなの母が生まれた。大妖の孫である一太郎もだから、妖が見える。一太郎の誕生のためにこの世を去った祖母おぎんが寄こしてくれたのは、犬神、白沢(はくたく)という2人の大妖だった。長崎屋の手代として、一太郎の世話役として、この2人はいつも若だんな一筋である。

他にも若だんなを慕う数々のユニークな妖怪が登場する。また、江戸風俗もいきいきと描かれていて、時にはお江戸の経済事情や食生活のうんちくも登場するので、読んでいて実に楽しい。妖たちも、人間たちも、それぞれ色々なキャラクターがいて、読んでいるうちにだんだんみんな知り合いのような気持ちにさせてくれるのも楽しい。

ほろりとする話あり、ちょっとぞっとするような話もあり、基本的にはミステリーである。長編あり、短編ありと、そのフォーマットも多様だ。妖がらみのミステリーもあれば、完全に人間だけの暗部をのぞかせる事件も起きる。

病弱なだけに悩みも尽きない若だんな、その幼馴染で小さな菓子屋の後取りだが、菓子作りが好きなくせに腕がいっこうにあがらないこれまた悩みの種がつきない栄吉。気の良い岡っ引の親分。商売にはしっかりしているくせに、若だんなをやたらに甘やかす長崎屋夫婦。

そして若だんなをとりまく数々の妖たち。特に楽しいのが屏風のぞきと鳴家(やなり)である。役者絵のような屏風が100年たって妖になり、役者のような派手な着物を着た色男になる。鳴屋はハリポタで言うならさしずめ、気立てのいいピーブスというところだろうか(笑)。小さな小鬼で、たくさんいる。顔は怖いらしいけれど、仕草や性格は小さな子供か、子犬のようで、読んでいるうちに、自分の周りにも数人いたらいいなあ、なんて思うようになるから面白い。

テレビドラマやラジオドラマにもなったようで、なるほど、これはさぞかし映像化するのも楽しいだろう。この続き(単行本で出ている)と「しゃばけ読本」も楽しみだ。11月に日本に行くので、そのとき買おうかなあと思っている。

読書レビュー:「八朔の雪ーみをつくし料理帖」

  • 2009.09.12 Saturday
  • 14:12
 
JUGEMテーマ:読書

出入りのネットの読書掲示板で勧めてもらって読んだ本。

大阪から江戸にやってきた澪(みお)は、水害で親を亡くし、大阪の料亭に引き取られてそこで料理修業をしながら育った。しかし火事で料亭は焼け、頼みの綱だった料亭の後取りは江戸の支店を吉原通いの借金でつぶし、行方不明である。がっくりした料亭の主人は亡くなり、澪は母代わりの「ごりょうさん」お芳の看病をしながら、江戸の蕎麦屋「つる屋」の種市という老人のもとで働くようになる。謎めいた武士の小松原、若い町医者源済、長屋の店子仲間のおりょうさん一家など、ベタベタしないがさっぱりした中に思いやりのある江戸の人々に助けられながら、澪は大阪で学んだ味を活かしつつ、江戸の人々にも喜ばれる味を作り出していく。逆境にもまれながら、泣いたり笑ったりしながら、苦労しながらもひたむきに生きていく、料理一筋で生きていく、と決めたけなげな少女の物語。

章ごとに料理が紹介され、巻末にレシピが掲載されているのも楽しく、人情時代グルメ小説、というところか。

高田郁、ということの作者の作品を読んだのはこれが初めてである。アマゾンのレビューの中には宮部みゆきの「初ものがたり」と比べる人も多く、また、藤沢周平などの人情時代小説には遠く及ばない、と厳しい評の人もいた。

(続きはネタバレも含みますので、未読の方はご注意ください)


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