米国の有力地方新聞の一つ、ボストン・グローブ紙が所有者であったニューヨーク・タイムズ社からレッド・ソックスのオーナーに売られるというニュースが話題になっている。
いよいよボストン・グローブがレッド・ソックス御用新聞となるのか?(笑)
冗談はさておいて、さらっと書いてあるが、ボストンっ子にとってはかなり大きなニュースである。
米国の新聞は地方紙がメインである。全国紙と呼べるのは、USA Todayという一紙だけで、これを定期購読している人は非常に少ない。これは旅行先のホテルで無料で配布されていたり、空港で売られたりはしているが、定期購読する全国紙があるとすれば、経済人が読むWall Street Journalくらいだろうか。これは日本経済新聞と同じような位置づけだと思っていただければいい。
朝日、読売、毎日などに匹敵する、一般の人たちが購読するのはニューヨーク・タイムズやボストン・グローブ、ワシントン・ポスト、シカゴ・トリビューン、ロサンジェルス・タイムスをはじめとする地方紙である。ここに列記したのは、全国的に有名なメジャー地方紙の一部。
それに加えて、アメリカではどの州のどのエリアにも地方の日刊紙がある。カンザスに住んでいたときは、住んでいた町ローレンス(人口9万人弱)のローレンス・ジャーナルという日刊紙と、隣のミズーリ州のカンザス・シティ(ローレンスから一番近いメジャーな都市)のカンザス・シティ・スターという日刊紙を併せて購読している人が多かった。
今住んでいるボストン郊外の町ではボストン・グローブやニューヨーク・タイムズが主流だが、それに加えて住んでいる市町村のローカル新聞が週一回刊行されているので、定期購読も出来るし、街のコンビニやスーパーで買うことも出来る。
もちろん、オンラインで読めるので今は紙の新聞を購読する人は減っているが…。
ボストン・グローブやニューヨーク・タイムズ紙は、オンラインの購読料を払わないとすべての記事にアクセスすることは出来ない。我が家では紙の新聞は取らないが、この両紙のオンライン購読をしている。
これらの有力地方紙ののニュースメディアとしての影響力は絶大だ。ボストン・グローブは伝統もあり、オーナーが変わるたびに注目されている。
ちなみにボストンにはもう一紙、ボストン・ヘラルドという新聞がある。いわゆる「格」から言うと伝統的にはグローブ紙よりは下と見られていて、そのせいかヘラルドはグローブ紙に対して非常に批判的な記事が多い。また、グローブはどちらかというとリベラル、ヘラルドはどちらかと言えば保守的な傾向がある。
ボストンだけでなく、大抵の大都市には複数の日刊紙があるのだ。ニューヨークではタイムズ紙に加えてニューヨーク・デイリー・ニュースとというタブロイド版がある。夫の両親は昔からずっとこの二紙を購読している。義母は「デイリー・ニュースはサイズだけじゃなく、中身も完全なタブロイド紙になってしまったわ。昔はこれもちゃんとした新聞らしかったのだけど」と歎くが、それでも長年の習慣で、朝この二紙を両方読む日課は続いている。
アメリカの根強い地方優先主義は、政治や色々な社会の機構を通じて実感させられることが多いが、新聞もまた然りである。
今回、ボストン・グローブがどうやらレッドソックスのオーナーに買い取られることになったようで、読売新聞とジャイアンツ(こちらは順序が逆だが)のような関係になるのだろうか(笑)。まあ、変なオーナーに身売り(ルパート・マードックとか)されるよりはローカルのオーナーでボストンに愛着がある人だから、よほどましである。
インターネットの時代になり、新聞界も定期購読の数の低下による収入源に悩まされているし、メディアの在り方にも色々問題はあるが、ボストン・グローブ紙はボストンをボストンたらしめている大事な要素の一つ。これからも頑張って続いて欲しいものである。
オーナーが変わると編集の方針も大幅に変わったりすることもあるので、新オーナーのもとで、グローブがどう変わっていくか、これは興味深い。
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