読書レビュー:ヴィクトリア朝時代のロンドンが舞台のミステリー、Mrs. Jeffriesシリーズ

  • 2015.01.08 Thursday
  • 03:34
JUGEMテーマ:読書洋書海外ミステリー

20年近く前に出会って以来、少しずつ読んできたコージーミステリーのシリーズ、Mrs. Jeffries Mystery Series。Emily Brighwell(エミリー・ブライトウェル)というアメリカ人の作家による作品だが、彼女の名前を日本語で検索しても何も出てこないところを見ると、日本では彼女の著作はまったく出版されていないようだ。他の名前でロマンス小説も書いているらしい。

Mrs. Jeffriesシリーズはヴィクトリア朝時代のロンドン(19世紀後半)を舞台にしている。シリーズ1作目は1993年出版、現在32作が出ていて、来月には33作目が出る予定だ。電子書籍化も進んでいて、今は確か、ほとんどはKindleやkoboで入手できるはず。私も半分以上はkoboから購入して読んだ。最初の頃はほぼ無名だったようだが、シリーズを重ねるごとにじりじりと人気が上がってきて、今ではかなり安定した売り上げらしい。

32冊全部のリンクをここに載せるのは難しいので、私のブクログの本棚で、彼女の作品32作だけ抜粋したリンクをここに貼っておく。このブログを読んで面白そうだ、と思って下さった方は、ぜひこちらからアマゾンへ(笑)。

シリーズを通した設定を個々の作品ネタばれが極力ないように気をつけながら、登場人物たちの紹介を書いてみる。ただし、登場人物の説明上、一作目のネタばれがほんの少しだが入っている。ネタばれはたとえ少しでもイヤ、という人はまず一作目を読んでみてください。

時はヴィクトリア朝時代のロンドン。スコットランドヤードの警部、ウィザースプーンは独身で中年、とてもおとなしく冴えない男性。中流階級の出だが、裕福な伯母が亡くなり、その屋敷と財産を相続してそこに一人で住むようになる。犯罪捜査の才能はまるでなく、もともとは記録室の管理をしていた。死体を見るのが苦手だが、義務感と正義感は非常に強く、親切で誠実な人柄だ。

屋敷をしきるのは家政婦のジェフリーズ夫人。初老だが若々しく、親切で明るい未亡人だ。亡くなった夫はヨークシャーで巡査をしていた。犯罪捜査に興味があり、夫の生前にも色々夫から話を聞いていたので知識もわりとある。夫が亡くなったあと、年金生活を謳歌しよう、とロンドンに出てきたものの、すぐに退屈してしまい、どうしよう、と思っていたところに屋敷を相続したウィザースプーン警部が家政婦を募集しているのを知り、さっそく応募。犯罪捜査の才能がまるでなく、おとなしい警部をおだて、励まし、また彼の知らないところで犯罪捜査に協力して、彼をスコットランドヤードで一番の殺人事件捜査官として有名にしていく。

ジェフリーズ夫人のもとで犯罪捜査に協力するのが屋敷の使用人四人である。

まずはコックのグージ夫人。(当時、イギリスの上流階級の家で働く女性料理人たちは結婚していてもいなくても、名前をミセスで通していた。グージ夫人の場合も結婚したことはない)以前は貴族の家で料理人をしていたが、年老いたから、という理由で年金もなく解雇され、仕方なくウィザースプーン警部の家で料理人として働くようになる。最初は警官の家で働くなんて、自分も落ちぶれたものだと思っていたし、イギリス階級主義に対して何の疑問も持っていなかったが、ウィザースプーン家で警部の人柄を目の当たりにし、また他の使用人たちとともに、初めて自分が家族と呼べるようなあたたかい人間関係を築き、その人柄も少しずつ変わっていく。犯罪捜査における彼女の強みは、どこへも行かずに自分のキッチンでありとあらゆる情報を集められること。長年上流階級の屋敷で働いてきた彼女は今でも当時の同僚たちと連絡を取っており、彼らを招いては情報を集める。また、屋敷に配達に来るいろいろな業者たちからも情報を集められるのが自慢だ。

続いて馬丁のスミス。がっしりした肉体と、強面の顔だが、頭の回転も速く、心は優しい大男。警部が屋敷と一緒に相続した馬車と馬たちの世話が仕事だ。実はこのスミス、以前警部の伯母に仕えていたが、一攫千金を目指してオーストラリアに渡り、見事財を成して帰ってきた。もう働く必要はなかったのだが、家族のような愛情を持っていた警部の伯母に会いに行くと、なんと彼女は病の床についていた。しかも、多くの使用人たちがそれを悪用してろくに彼女の世話もせず、自分たちのふところを肥やしていたのだ。唯一何とかその伯母の世話をしようとしていたのが、若い従者のウィギンズだった。

スミスはそれらの使用人を追い出し、ウィギンズと二人で警部の伯母の最後を看取る。ウィギンズはスミスが裕福であることを知らないが、伯母はそれを知っていたものの、甥のウィザースプーンが心配で、スミスに警部の面倒を見てくれるよう頼んで息を引き取った。そのため、スミスは自分の富を秘密にして、馬丁としてそのまま屋敷にとどまる。その後使用人が増えるに従い、スミスはますます本当のことが言えなくなり、身分を隠したまま、彼らと犯罪捜査に携わるようになる。スミスはロンドンの居酒屋や馬車仲間などから情報を集める一方、自分の財力を利用して、情報屋から情報を買ったりもする。また、彼が扱う馬車や馬は捜査活動や犯人追跡にも役立っている。

ウィギンズは若いフットマン(従者)。最初の頃は10代のニキビ面であまり頭の回転もよくなく、自分たちが警部の犯罪捜査を行っていることに気づくのも一番遅かった。惚れっぽく、近所のメイドにすぐフラフラになったりもしていたが、成長するに従い、思いやりがあり、機転も利く、正義感にあふれた心優しい青年になっていく。勉強家でもあり、将来はジャーナリストか何かになりたいと思っている。犯罪捜査では、被害者や容疑者の屋敷の使用人からの聞き込みによる内情調査を得意としている。

ベッツィーは若いメイド。ロンドンの貧民街で育ち、辛苦をなめたあげく、瀕死の状態で警部の屋敷の玄関前に倒れていたところを助けられ、そのまま屋敷で働くようになる。警部に救われたという恩を強く感じており、犯罪捜査にも熱心だ。気が強いが頭も良く、美しい娘で、スミスはベッツィーのことを思っている。犯罪捜査では、被害者や容疑者の近所の商店での聞き込みを得意とするが、時に無謀な行為に出ることもあり、スミスをはらはらさせることが多い。

ニーヴェン警部はウィザースプーン警部の同僚だが、盗難事件を割り当てられることが多く、ウィザースプーン警部のことを嫉妬している。野心があり、政治家たちへのコネも多いため、それをアテにしており、犯罪捜査の腕は二流。また庶民を見下すため、捜査活動では彼らから必要な情報を得られないことも多い。ウィザースプーン警部のことを軽蔑しており、彼が立て続けに手柄を立てているのは、誰かが助けているからではないかと疑惑を持っている。

ルーティーは高齢のアメリカ人の未亡人。夫とともに銀鉱山で財を成してロンドンにやってきた。言葉遣いは乱暴で、今でも銃を持ち歩くような女性だが、情にもろく、面倒見もいい。非常に裕福で投資も上手なため、ロンドンの金融界に顔がきく。服装の趣味はかなり派手で、いつも派手な色合いの服を着飾っている。彼女はシリーズ一作目でウィザースプーンが手がけた事件の場に居合わせたため、警部と知り合いになる。賢い彼女は、警部の使用人たちが裏で捜査協力をしていることを知り、一作目の終わりに、ジェフリー夫人にある事件の捜査を依頼する。そして二作目以降、彼女は自ら望んでジェフリー夫人たちとともにウィザースプーン警部のため、犯罪捜査に参加するようになる。

ハチェットはルーティーの執事。色々いわくつきの過去があるようだが、ルーティーとは使用人と主人以上の信頼と友情でかたく結ばれている。(恋愛関係は皆無)常にエレガントな態度と言葉遣いを崩さず、ワイルドなルーティーをたしなめたり、はらはらしながら見守ったりする彼も、意外なところに色々とコネがあり、ロンドン中の色々な世界にいる知り合いへの聞き込みで犯罪捜査に協力する。ルーティーと、どちらがより事件捜査に貢献できるか、でいつも張り合っている。

ルース・キャノンベリーはウィザースプーン警部の近所に住む未亡人。警部より少し若いくらいではないだろうか。元々牧師の娘だが、年上の夫、キャノンベリーと結婚して貴族となる。ウィザースプーンと恋仲になるが、とにかく警部がオクテなので、ジェフリー夫人の協力が欠かせない。彼女もシリーズ途中から捜査に協力するようになる。彼女の場合、上流階級における自分の立場を利用し、ジェフリー夫人たちが会えないような人々から犯罪捜査の手がかりになるゴシップを聞きだす。

バーンズ巡査はウィザースプーン警部のアシスタントとして捜査にあたる初老の巡査。たたき上げで頭もいい。シリーズが進むにつれ、ジェフリー夫人たちの活動に気づくようになり、警部に内緒でジェフリー夫人たちとも捜査の情報をやりとりして捜査にあたるようになる。ニーヴェン警部のことが大嫌い。同じように上流階級の家で聞き込みをする場合、ぞんざいな扱いをされると黙っていないことも少なくない。気骨ある人柄。ウィザースプーン警部の誠実な人柄を心から尊敬しており、彼のためにベストを尽くしてサポートする。

このシリーズにおける殺人事件の大半は上流階級で起きる。まずは殺人事件のシーンから始まることが多いが、犯人は誰だかわからない。作品のペースはのんびりしており、それほど長くないので読みやすいのも魅力。英語もたぶんそれほど難しくないと思う。軽めのコージーミステリーは大人向けの洋書入門としてはなかなか悪くない。

映画「ゴスフォード・パーク」やイギリスの人気テレビドラマ「ダウントン・アビー」が好きな人には特にお勧め。当時のロンドンの人々の生活がいきいきと描かれていて、特に「階下」に住む人々、つまり屋敷の使用人たちの姿がよくわかるのも面白い。

また、32作と長いシリーズなので、シリーズを通して少しずつ登場人物たちの状況が変わっていくのも楽しいところだ。ウィザースプーン家が、一人として血はつながっていなくても「家族」としてつながっていくその過程もなかなか読んでいて嬉しくなるし、20年ちかくかけて読んでいると、みんな自分の身内のような気がしてくるのも、長いシリーズの楽しさではないだろうか。

服装用語などがわからなくて、読書を中断して調べたりすることもあるが、それも私にとっては読書の醍醐味だったりする(笑)。ロンドンの地理がわかったらもっと面白いだろうなあとも思う。シャーロック・ホームズが活躍したのとちょうど同じ時代のロンドンで老若男女たちがそれぞれの知恵と経験を尽くして素人ながら、犯罪捜査の腕を競い合う楽しい物語である。来月に出るという最新作が楽しみだ。
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