読書レビュー:宮部みゆき「おまえさん」上巻

  • 2012.05.29 Tuesday
  • 11:54
「ぼんくら」「日暮らし」に続く井筒平四郎と弓之助シリーズ第三作目。これも分厚い文庫本二冊の長編である。

おなじみのメンバーは皆元気である。平四郎は相変わらず呑気だが鋭いし、弓之助とおでこの三太郎は子ども子どもした前作、前々作に比べると著しく成長し、思春期を迎えつつある。お徳のお菜屋も繁盛している。政五郎親分も相変わらずかっこいい(笑)。

新登場の2人もこれまた魅力的だ。文武両道にすぐれて性格もさわやかな、しかし見た目はかなりの醜男というユニークな設定の若い同心、信之輔。この信之輔の大叔父がまた面白い。本宮源右衛門というこのご老人、次男坊として生まれ、お役につくことはなかったが、兄のお役目を助けてきたなかなかの切れ者である。しかし今では親戚から厄介者扱いされている…。

今回この長編の軸をなす事件は生薬作りにたずさわる人々が狙われる事件である。そしてその背景には昔、闇から闇へ葬られたある出来事があった。過去と現在をつなぐ線を探して平四郎、信之輔、そして政五郎たちの探索が進む。

前巻なのでここではあまりネタバレはしないが、相変わらず宮部みゆきのストーリーテリングの見事さ、その中に同時に流れる冷たさと暖かさの絶妙な配合、鮮やかに描き出される一人一人の人生には舌を巻く。あまりにもたくさんの人々の小さな物語がメインの謎解きと並行して進んでいるので、それらのすべてをしっかりと味わい、消化したくて、二度続けて読み直したほどである。

ぼんくらと日暮らしはどちらも見事にラジオドラマ化され、これは購入して何度も聞いているのだが、この三作目もラジオドラマ化してくれないかしら…。いや、映画でもドラマでもいい(笑)。

続きは下巻のレビューにて。
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痒み止めの新薬「王疹膏」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の同心・平四郎は、将来を嘱望される同心の信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者“ご隠居”源右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだ
  • 粋な提案
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