読書レビュー:修道士カドフェルシリーズ10作目「憎しみの巡礼」

  • 2009.01.24 Saturday
  • 18:41
JUGEMテーマ:読書
修道士カドフェルのミステリーシリーズ第十作目。

時は1141年五月。カドフェルが暮らすシュルーズベリ修道院で年に一度の聖ウィニフレッドの祭りが開かれる。聖女のもたらす奇蹟を求めて、数多くの巡礼が修道院を訪れる大切なイベントである。

イギリス国内は、スティーブン王とモード女帝の王位争いの内乱で揺れている。シュルーズベリーの代官で、カドフェルの良き友であるヒュー・ベリンガーはスティーブン王の忠実な味方であるが、スティーブン王は現在女帝の捕虜となっており、女帝の即位も時間の問題だと言われていた。

修道院を訪れた巡礼のうち、二組のグループがカドフェルの注意をひきつける。一組は、未亡人と、その姪と甥の3人である。甥のルンは幼い頃から原因不明の病で足を悪くしており、まともに歩けない。未亡人とルンの姉ミランゲルは、献身的にルンの世話をしている。もう一組は、若い青年二人。その一人キアランは裸足で、重い十字架を首にかけ、遠距離を歩いてきた。連れのマシューは道中で出会ったミランゲルと恋に落ちたようだが、キアランから片時も目を離さない。この二人はどこから来たのか?

また、よその修道院から来た修道士の助言で、カドフェルは巡礼の人々の中に、ならず者のグループが混じっていることを知り、ヒューに警告する。また、カドフェル自身も、この祭りで祈っていることがあった。そもそも聖ウィニフレッドがこの修道院に来ることになったいきさつにはカドフェルも関係しており、修道院の人々が誰も知らない秘密があったのだ(一巻参照)。その時取った行動が正しかったのかどうか、寡婦ドふぇルは聖ウィニフレッドからの「しるし」を待つ。

そして聖ウィニフレッドの祭りが始まった・・・。

(以下はネタバレを含めた感想になります。ご注意ください)
カドフェルが6巻で出会い、その正体に驚き、喜びもしたオリヴィエ・ド・ブルターニュがモード女帝に使える主人の使いとしてシュルーズベリを訪れ、カドフェルに喜びを与える。

今回のミステリーは非常に面白く、また感動的でもあった。 聖ウィニフレッドはカドフェルの謙虚な祈りに答えて、また巡礼の中でももっとも謙虚であったルンに奇蹟をもたらす。そして、カドフェルしか知らないひそかな奇蹟をも与えてくれたのである。一方、最後に謎が解けた時、キアランとマシューの関係は実に複雑なものであったことがわかる。

今回の殺人事件は、シュルーズベリではなく、遠いウェストミンスターで起こったものである。その殺人犯が巡礼の中に紛れ込んでいるという結末になったのだが、修道院内で繰り広げられる人間関係が面白く、一気に読むことができた。

カドフェルの、すべての人への暖かな思いやりとゆるぎない信仰で、これらの巡礼の人々はそれぞれの思いを抱き、これからの人生をまた歩んでゆくこととなる。奇蹟をうけたルンは、このままウィニフレッドの元にとどまり、仕えると宣言し(つまり修道士になると)、ミランゲルとマシューは結婚し、キアランは辛い旅を自らの意思で続ける。オリヴィエは目的を果たし、カドフェルと別れを惜しむ。ならず者たちはヒューとカドフェルの活躍で逮捕される。すべてめでたしめでたしだが、決してお仕着せな結末ではない、ということも、このシリーズの後味の良さと言えよう。

このシリーズを読む進むにつれ、史実であるスティーブン王とモード女帝の内乱に興味がわいてきた。日本では鎌倉時代初期の時代。この時代のイギリス史、少し勉強してみたいものである。
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